最終電車は、都会で暮らす人々にさまざまなドラマを与える。
先日も終電間際のホームで、互いに帰りたくなさそうなしぐさで何かを話している若いカップルを見かけた。あのあと二人にどんなストーリーが待ち受けていたのか、じっくり観察したかったが、僕にも終電の時間が迫っていたので結末はわからない。
恋人たちにとっての終電はロマンチックなストーリーかもしれないが、われわれ働く人々にとっての終電はいつも悲劇的である。
会社や取引先のタクシーチケットを使える身分の人には関係ないだろうが、終電を逃した労働者はまさしく悲劇の主人公である。
「電車がない」というのは絶望的な状況であり、そして多くの場合、酔っぱらっている。つまり、酔いが絶望に輪をかけているケースが多い。
そんな時に役立ちそうなサービスが『サヨナラ終電』である。
このサービスのプロデューサーである五十嵐さん自身が、いつも酔って終電を逃しているとのことで、終電を逃したときの悲劇的、絶望的状況を解決へと導くための工夫があちこちに凝らされている。
その工夫のひとつが、サービスのわかりやすさ。
ホーム画面に登録したアイコンをタップすると、「カプセルホテル」「マンガ喫茶」「居酒屋」「カラオケ」のボタンが表示される。どれも、終電を逃した際に翌朝の始発まで過ごすのにふさわしい選択肢だ。
シラフの時になら、「カラオケボックスにでも行って時間をつぶそうか」とか「マンガ喫茶で朝まで仮眠しよう」といった対応策が思い浮かぶものだが、終電を逃すほど酔っている場合には、なかなかそうはいかない。
表示されたボタンをタップすると、現在地付近の施設が地図上にピンで表示されるので、そこへ向かうことが可能だ。
つまり、たった2タップだけで始発まで過ごすことのできる最寄りの施設を見つけることができるのだ。これは、酔っている状況下でもわかりやすい。
そしてもうひとつの工夫が操作のしやすさである。
施設を選択するボタンは大きく、しかも文字で示されているため誤操作の心配がない。これは「酔っていても操作しやすいよう考慮して」デザインされたというから、これぞまさしく「バリアフリー」だ。
仕事場のデスクでこのサービスを確認していた時は、地図上に表示される情報に、希望する施設の公式サイトへのリンクがないことに疑問を持っていたが、実際に使用してみると、酔っている状況ではサイトを確認してお店の情報を調べて……といった使い方は合理的でないことに気づいた。
酔った頭でホームページを確認するよりも、実際に行ってみた方が早いのだ。このへんの割り切りにも、『サヨナラ終電』の設計思想が伺える。
これから忘年会シーズンに突入するが、この季節はうっかり駅前などで酔いつぶれてしまうと命に関わる。それを避けるためにも、飲む前に『サヨナラ終電』をスマートフォンのホーム画面に登録しておくことをオススメしたい。
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1973年北海道室蘭市生まれ。印刷屋、内装屋、タクシー運転手、お抱え運転手、報道車両ドライバーなど、自分でも把握しきれないほど職を転々とし、
2005年からデイリーポータルZにライターとして参加。
2008年ニフティに入社、ライター兼編集者としてヒョロヒョロと仕事をしていました。
2012年にニフティを退社し、独立。フリーランスのライター・編集者としてモリモリ働いています。(これまで仕事などは→こちら)
あまり火が通っていない肉とエタノールとミニマムな乗り物(昔のヨーロッパのクルマとかホンダのスーパーカブとか)が好物。
まあだいたいうまくいくだろうと思っているうちに人生の半分が過ぎたので、意外となんとかなるもんだな、と思っております。
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